血圧は、主に自律神経(交感神経・副交感神経)の働きによって1日のリズムを刻んでいます。これを血圧の日内変動といい、24時間周期で変動する生体リズム(サーカディアンリズム)の1つです。起床すると交感神経優位となって血圧は上昇し、日中の活動状態に最も高くなり、夕方から夜にかけて副交感神経優位となって下がっていき、睡眠中に最も下がります。正常な人では、夜間(睡眠中)の血圧は昼間の血圧より10〜20%低くなります。
高血圧患者さんの中には、日内変動が乱れて、夜間血圧の低下が10%未満と小さかったり、逆に夜間に血圧が上昇する人もいます。夜間血圧の低下が小さいタイプや上昇するタイプの夜間高血圧の人は、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)のリスクが高いことが知られており、なかでも、夜間血圧上昇タイプで睡眠時間が短い人は相乗的に心血管疾患のリスクが高まることがわかってきました※1。
夜間高血圧の要因は様々ですが、過剰な食塩摂取や自律神経の乱れに加え、体内時計の乱れやメラトニン分泌低下もその要因と考えられます ※2。メラトニンと高血圧との関連については様々な研究が進んでおり、メラトニンを就寝前に投与すると、未治療の高血圧の患者さんの血圧が低下したという報告もあります※3。
サーカディアンリズムの乱れと心血管疾患との関連についてはまだ十分に解明されていませんが、サーカディアンリズムすなわち体内時計の乱れが夜間高血圧の発症や、さらには心血管疾患発症の引き金となる可能性は高いと考えられます。
夜間高血圧かどうかは、24時間血圧測定によって確かめられ、家庭向けの24時間血圧計もあります。高血圧の患者さんで、「最近、よく眠れていない」という方は、体内時計が乱れているかもしれません。
※1 Eguchi K, Kario K et al. : Arch Intern Med,168 : 2225-2231 2008.
※2 Kario K : J Am Soc Hypertens.5 : 354-358, 2011.
※3 Scheer, FA et al. : Hypertension, 43 : 192-197, 2004.